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TVディレクターがメディアでは伝えられないニュースの裏側を日々レポート。
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僕らは「死刑」を煽っただけだったのか?…鎌田慧氏の描く「鈴香」事件
「畠山鈴香が死刑にならなかったのは納得いかない」
ある冤罪事件の支援者が投げかけた言葉です。冤罪事件の支援者ですら、こういう言葉を発する。あの事件がいかに一方的に語られてきたか、象徴するように感じました。

その洪水のような「畠山鈴香=鬼」という情報に疑問を持って書かれたのがこの本だと思います。さすが鎌田慧さん。洪水の中でも流されない泳ぎ方をしていらっしゃると感じました。

検察の垂れ流す一方的な情報をそのまま拡大するだけの、拡声機のようなマスコミ。その情報は本当なのか?裏は取れているのか?不都合な真実に目をつぶっていないのか?疑問を持ち続けることが取材者としていかに大切か思い知らされます。あの取材にあたっていた記者の何人が、そういう視点を持っていたのでしょう?鈴香は「いじめられっこだった」「鬼のような母親だった」「男にだらしなかった」…。直接事件とかかわりのないところでも心証クロの情報ばかり集めたのではないでしょうか。検察の展開するストーリーの方が面白いから、カタルシスを感じるから、そういった理由で無批判に検察のストーリーに乗っただけだったのではないでしょうか?
さらに検察の主張を被害者にぶつけることでますます憎悪を煽りたてる。僕らマスコミはそんなことしかやってこなかったのではないでしょうか。

解離・転換性障害ということについてどれほど検証したのでしょうか?解離性健忘は?検討しても揶揄するだけだったのではないでしょうか?

彩香ちゃんと橋の上にいたところまで覚えていた鈴香はそこで記憶が途切れます。その次には自分が「橋の上で尻もちをついていた」ところからしか覚えていません。

鎌田さんはこう書いています。
「尻もちは力を抜けた瞬間を意味している。橋の上で何かを引っ張っていたのだ。下から上に引き上げていて、それを逸すると弾みを食らって尻もちをつく。〜中略〜
『突き落とし』たり『押した』りしたなら、体重が前にかかって前かがみの姿勢になる。また、『手で払う』のが外れた場合には、横倒しになろう」

この間、何の物証もありません。あるのは鈴香の自供だけです。それが本当に自供なのかどうか、裁判で鈴香は明確に殺意を否定しています。僕のこれまでの警察に対する取材などを考えれば、その「自供」なるものがいかに危ういものか云わずもながです。

あの「光市事件」の検察側主張とそれに乗っかるだけで何も検証しないマスコミ報道を思い出しました。

権力に踊らされるまい、加担するまい。改めて感じます。

橋の上の「殺意」―畠山鈴香はどう裁かれたか
posted by iwajilow | 16:14 | いわぢろうのおすすめ本 | comments(1) | trackbacks(0) |
報道する側の責任
でっちあげ



03年に話題になった「お前の血は汚れている」と児童をいじめたという教師の話を元に事件を検証した本です。
いかに当時の報道が一方的であったか?
事実関係を検証したのか?
客観的な取材をしたのか?
報道する側の人間にとっては大切なことばかりが書かれています。

あの事件は僕も覚えています。
確かに一報は朝日新聞で報じられました。
「お前の血は汚れている」と祖父がアメリカ人ということを母親から聞いた教師が
執拗に児童にいじめを加えた。
さらに「アンパンマン、ピノキオ、ミッキーマウス」など刑罰を選ばせ、耳を引っ張り上げ、児童の耳がちぎれたり…。
児童はPTSDになり、下痢、嘔吐などを繰り返すようになった。

その記事を読んだときに酷い教師がいるもんだと思ったもんです。

ところが、筆者によるその後の取材では
耳がちぎれるほどの怪我をしたにもかかわらず保健室には手当てをしたという記録もない、治療に来たという記憶もない、診断書もない。
そういった状況だったと証言する児童も一人もいない。
など体罰による怪我と母親が証言する事実は何一つウラがとれなかった。

PTSDの症状を見たのも母親以外に誰もいない。

祖父がアメリカ人どころか、親類にアメリカ人はいない。
アメリカにいるといわれていた祖母は近所でスナックを経営していた。

母親が子供の頃アメリカに何度も行き来していたという証言すら、裏付けるものは何もない。(行ってない事を裏付ける証言はたくさん出てきます)

などなどの事実が明らかになってきます。

片方の主張によって書かれた本ではあるのでその分は割り引いて考えなければならないとは思いますが、こういった側面はあるということは認識しなければいけないですね。

取材過程で自分の思いに疑問を呈するような事実が浮かび上がってきたら、それを避けるのではなく、その疑問を徹底的に取材しなければならない。
そこで浮かび上がってきた事実がそれまでの報道と違っても耳をふさぐのではなく、間違いだったらきちんと訂正しなければならない。
当たり前のことだけど自分にできているのだろうか?

ネタにしやすいとか、取材しやすいとかで逃げてしまうことが重大な間違いを起こし他人の人生を狂わすということまで引き起こします。

日々事件に接している身としては、改めて責任の重大さを痛感しました。

そして、この欠陥報道が過去のものではなく、現在の報道体制の中で起きたことに恐怖を覚えました。



でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相
posted by iwajilow | 22:15 | いわぢろうのおすすめ本 | comments(1) | trackbacks(0) |
初めて太宰を呼んだときのような衝撃を受けました。
ふとしたことからあの連続射殺魔「永山則夫」に興味がわき
ついつい買ってしまった本なのですが…。

これすごい。

極貧にあえぎ東北の寒村から上京してきた彼は
4人殺害という凶悪犯罪を犯し逮捕されます。

その後獄中で、初めて「知」にめぐり合い貪るように
本を読み出すのですが…。

これは獄中手記と呼ばれているのですが、
一人の男が「知」に目覚めていくさまを自ら綴った
セルフドキュメントです。

行間から彼の悦びが伝わってきます。

心の叫びが伝わってきます。

僕は初めて太宰を呼んだときのような衝撃を受けました。

本物です。



小道具をかっこよく配置した計算された物語だったり、
物事を斜に見てシニカルな笑いを誘うエッセイなど
ばかり読んでいたせいかこの本気さに圧倒されました。

砂漠に水がしみこんでいくかのように彼は「知」を吸収していきます。
そのまっすぐさが心地よいです。

その「知」への理解の仕方に100%同意できるわけではないけど、
ものすごく正直です。

今まで「連続射殺魔」として知っていた「永山則夫」が
ものすごく近く感じられました。

きっと貧困がなければ彼は純朴なあの当時たくさんいた
マルクスにかぶれた青年の一人になっていたのでしょうね。

だからといって彼が犯した罪が正当化されるはずもありませんが。。


無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

posted by iwajilow | 23:44 | いわぢろうのおすすめ本 | comments(0) | trackbacks(0) |