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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
JUGEMテーマ:読書

昨日の朝、宅配便が来て「あれ?何か頼んだっけ?」と思ってあけると
村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」でした。

そういえば、この本、予約していたっけ。

ということで、話題になっていることもあり、一挙に読みました。

読み進むうちに、これ面白いのかなぁと疑問符がたくさん頭の中に湧いてきました。

高校の時に仲の良かった5人のグループから20歳の時に突然、切られ
そのことを引きずりながら36歳まで生きてきた多崎つくる
新しいガールフレンドができます。その彼女の勧めに従って
彼はその自分を切った4人を訪ね歩いて真相を確かめていくというストーリーです。

謎は謎のままにしといて想像力をかきたてさせたり、
相変わらずのおしゃれな小道具が登場し、上手だなぁと思います。

あくまでもおしゃれです。

その4人のうちの一人はフィンランドに住んでいるところなんてものすごくおしゃれです。
陶芸をやっていたり、冷えたシャブリを飲んだり…。

たぶんカンボジアでもフィリピンでもおしゃれに描かれるんだろうなぁ。。。

でも、村上氏の小説って僕にとってはリアリティーがないように感じます。

この小説の中でも、拒食症や自殺願望のことが書かれているけど、リストカットしまくってみみずばれになった手首も登場しないし、ゲロや汚物の処理でドロドロになる父や母の姿も登場しません。
のたうちまわるような苦しみの中でなんとか、今日一日だけ生きているという
当事者の感じがないというか…。

小説のように大学時代も友人もほとんどつくらず、酒も飲まず、授業もさぼらず出続け、毎朝大学のプールで泳いで、唯一の友人とクラシックについて語り合う、なんてありえるか?

僕は大学の頃バイトに明け暮れ、毎日のように飲んだくれ、授業をさぼって女の子のことばかり追いかけていました。

たいていの大学生はサークルと女の子と車と就職とバイトのことで頭がいっぱいだと思います。そういった要素の全くない大学生活なんて僕には考えられません。

そしてその唯一の友達(男)がクリームソースを作ったり、パエリヤを作ったり…するか?

パエリヤなんて、僕は今も作れないし、47年も生きていてたぶん1回くらいしか食べたことがない。

でもって何なく自分の希望する会社に正社員として入社し順調に人生を進むなんてありえるか?

就職活動だって、そして社会人になってからは人間関係だって、仕事のきつさだって、給料の安さだって、ものすごく大変です。1円でも安く生活しなければ、必死の思いで子どもを育て、バーゲンや消費税還元セールに足を運び、なんとか生活している庶民の姿はまったく登場しません。

教養や知的な雰囲気を取り入れたトレンディードラマというか
知的官能小説というか、そんな感じがしました。


ただこれは村上氏の独自の世界で、ほかにこういった小説をかける人はいないとに思います。
だからこれは、面白いとか面白くないとかそういうことではなくて村上春樹ワールドを楽しむかどうかって話だけなんですね。

そういう意味ではこの新作も間違いなく村上春樹ワールドを楽しめます、春の熊のように。

それが好きか、嫌いかは別ですが…。
posted by iwajilow | 10:08 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
1Q84-3
ようやく読み終わりました.
圧巻でした。

本筋とはあまり関係ないのですが、(それでも村上ワールド彩る小道具の一つだとは思いますが)小説の中でかつて僕が何十回と放送したダイエットのことが書いてありました。


「一位になっているのは『食べたいものを食べたいだけ食べて痩せる』というダイエット本だった。素晴らしいタイトルだ」(58ページ)


もしかして村上春樹氏は僕の作った番組を偶然でも目にしたのかな?と想像したら、なんだか嬉しくなってしまいました。

レビューは[こちら]です。
posted by iwajilow | 09:58 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
「1Q84-3」を買う
せっかく1、2巻も読んだことだしと「1Q84」の3巻を買いにいそいそと出かけました。

ところが近所の本屋さんはすべて「品切れ」。
がびーん。

こうなると意地になってしまうので、結局池袋西武のリブロまで行って買ってきました。この本屋にはまだ大量においてありました。

さっそく手にとってレジに並んだのですが、僕の前の人もその3人くらい前の人も「1Q84」の3巻を手にしていました。本屋で同じ本を買う人と行きあうことなんてめったにないことなのに凄い。

中身はまだ途中までしか読んでいないのですが、3巻が出るにあたって気になっていた青豆さんは第2章でどうなっていたのかはっきりします。その後の運命はまだ読んでないのでわかりませんが…。

しかし「昨日テレビ見た?」とか「あの映画見た?」という会話のように「あの本読んだ?」なんて会話が(マニア以外でも)成立しそうで、それだけで素晴らしいことのような気がします。

それにしても印税が10%として1冊190円。初版だけで50万部ということはそれだけで1億円近い。それも凄いことだと思います。




posted by iwajilow | 11:18 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
隠蔽
鳩山首相に続き小沢幹事長周辺が騒がしくなってきています。

通常、「政治」と「金」の問題というと、政治家としての権力を利用して私腹を肥やすという図式なのですが、この二人の場合はそれがあまり当てはまってないんでないの?と思っています。

鳩山氏の場合は、自分の家の金を政治活動に使っていたわけですね。翻ってそれを追求する自民党のたとえば2世議員の小渕さんは政治団体を迂回させて無税で相続していると聞いています。迂回させればいいでしょ、ってことが本質ではないと思います。「巨額の子供手当て」っていうけどそれは2世議員、3世議員に全部跳ね返ってくるような気がして、あまり説得力を感じません。

また、小沢氏にしても秘書の寮を作ったわけですよね。賄賂でもって私腹を肥やしたって話ではないです。

そもそも野党の党首なんて何の権限もない。献金する企業にしたって、団体にしたって与党議員に比べれば旨みも少ない。せいぜい保険として献金しておくかってレベルなんじゃないんでしょうか。

では何故、これほどまでに検察が躍起になるか?これは僕の妄想ですが、ひとつは中国に接近する民主党政権に対するアメリカのけん制。かつてアメリカの国債を売りたいといった橋本首相は失脚ののち死去。アメリカのバイ・アメリカン条項(公共事業で使用する工業製品を米国製に限定するという条項)に懸念を表明し、たてついてた中川昭一は「IMFに外貨準備金の一部(1000億ドル→つまりアメリカ国債)を拠出する取り決めに正式に署名」した次の日が泥酔会見で失脚。さらに落選、死去。

古くは中国との国交回復をさせた田中角栄が失脚。あの当時、ロッキード事件を取材していた方にこんな話を聞いたことがあります。「田中角栄は確かに賄賂をもらっていた。しかしあの立件された5億円の事件は冤罪だった。それはみんな知っていた」。本当かなぁ。。

さらにもうひとつの僕の妄想は「取り調べ可視化の阻止」。この法案が通ったら検察は今までのようにでっち上げ、ではなくて取調べができなくなることにものすごい危惧を感じていると思います。そこで、誰がこの国の権力者か思い知らせる、なんてことは考えていないとは思いますけど…。

法務官僚の序列って
トップが検事総長その次が東京高検検事長、3番が大阪高検検事長で事務次官はその次あたりと聞いたことがあります。とすると法務大臣はどこに位置するのでしょう?選挙で選ばれたわけでもない官僚が司法のトップにいるのであれば怖いですね。

やりたい放題です。そういう世界であればいろいろなことが隠蔽できます。と無理やり本日の本題に結び付けてしまいました。


ということで元同僚が自分の追いかけていた事件を本にしました。



そもそもは福島県の中学で起きた部活動中の事故です。

2003年、福島県内の中学校柔道部で練習中に、13歳の少女(当時)が意識不明の重体に陥った。
看病に全力を尽くす両親の元に「柔道部員の少年が少女に暴行を振るった」との情報が寄せられる。
真相を知ろうとする両親に対し、学校は暴行の事実を全面否定する。八方塞がりの中、両親は民事訴訟を起こすと、テレビ局が取材に訪れ、報道を開始した。
次第に明らかになる学校側の「隠蔽行為」。当初、視聴率は伸び悩むが、そのプレッシャーに耐え、番組は計13回の放送を行った。
また、ネット掲示板「2ちゃんねる」では、少女と両親への支援運動が呼びかけられる。
真相解明への希望が生まれては、行政が踏みにじるという絶望的な闘いの中、遂に民事訴訟の判決日が近づいてきた――。

アマゾンより


彼がこの事件を追いかけているころ、僕はまったく別の政務調査費などを追いかけていました。なので、読んでみてこんなことやっていたんだーと思いました。

またこういった思いで取材に臨んでいたということは発見でした。普段、僕は照れ臭いのもあって自分の取材に対する思いなんて語り合いません。

番組の中のヒエラルキーも割と赤裸々につづられているし、ある程度テレビの内実がわかるのではないでしょうか。この業界の中のことを知りたい方は読んでみるといいかもしれません。番組ってこういうふうにできていきます。

登場人物のキャラ設定など多少、脚色されている部分もありますが、ある面真実をついてもいます。

しかしカリスマプロデューサーにベテランディレクター、ちょっとカッコよすぎじゃないっすか?(笑)

登場人物の一人は「俺、視聴率至上主義者として描かれてない?そんなことないのになぁ(笑)」と言っておりました。

と、事件とは別のところに感心してしまいましたが、事件の真実を根性で暴いていくところは素晴らしいです。そして「加害少年もある意味被害者である」という視点は僕らにはなくてはならない視点だと思います。

勉強になりました、ベテランディレクター。


訂正 「小渕さんは政治団体を迂回させて無税で相続しているわけですね」
     そう報じられていたということなので
   →「小渕さんは政治団体を迂回させて無税で相続していると聞いています」と訂正しました。元は週刊文春09年2月12日号の上杉隆さんの記事です。
    1月8日 午前10時

posted by iwajilow | 09:12 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
春のクマくらい好きだよ…1Q84
村上春樹氏の本を読むとなんか自分が特別な人になった気持ちになってしまいます。普段は深く考えて行動なんかしてないのに、なんだか考えているような気になります。

だってね、予備校の秘書の女の人と臨時講師が
「何も持ち合わせてないよ」「魂のほかには」
「なんだかメフィストの出てくる話みたい」なんて会話するわけない。

僕も未だかつてそんなファウストの話しなんてだーれともしたことありません。だけど、そういう世界にどっぷりつかってしまうと、自分がそういう世界の住人で周りもそうなんじゃなかろうかって勘違いしてしまうんでしょうねぇ。

普段の生活の中で映画の「スティング」のシーンを想像することもないし、アリストテレスとプラトンの違いをメル・トーメとピンク・クロスビーくらい違うと説明する人もいないし、説明されてもわからない。でもその世界にいる感じが気持ち良くなってしまうんですね。

ある意味ナルに浸るんだろうなぁって。たがみよしひさ氏の「軽井沢シンドローム」を読んでいるときと似た気分になります。

そのナルな気持ちをさらに高めてくれる小道具たち。いつもながら食事はことにおしゃれです。

ムール貝のスープに三種類のネギのサラダ、岩手産仔牛の脳みそのボルドーワイン煮込みも、レンズ豆のスープ、春の温野菜の盛り合わせ、アンコウの紙包み焼き、というメニューのうち、かかわりがありそうなのは「春の温野菜の盛り合わせ」くらいです。だいたい「岩手産仔牛の脳みそのボルドーワイン煮込み」って何色なのかすら想像ができません。

(新宿の風林会館の裏の日本で一番そういう筋の方の事務所の多い地域で、豚の脳みその煮込みを食べたことはあります。なんでもその店では数年前に中国系マフィア同士の抗争があって、一人の中国人が青龍刀で頭をかち割られたそうです)

さらに茹でた白色のアスパラガスとニソワーズ・サラダ、蟹肉を入れたオムレツも縁がありません。ハイドンのチェロ・コンチェルトを聞きながらそういった食事をする機会は一生ないと思います。縁があるのはせいぜい納豆オムレツに缶に入った白色アスパラガスを食べながら、みのもんたを見るとかですね。

夜遅くまで営業している飯倉の小さなイタリア料理店でキャンティ・ワインを飲みながらマグロの入ったサラダを食べたり、パジリコ・ソースのかかったニョッキを食べたことも20年以上六本木で働きながら一度もないです。

僕は「がんちゃん」の焼き鳥か「ザボン」のラーメンです。

家ではハムときのことブラウン・ライスを使ってピラフも作らないしカリフラワーを茹でて作り置きのカレー・ソースもかけない。だいたい一人暮らしのときにカリフラワーなんてものが家にあったためしがない。いんげんとタマネギの野菜サラダもなかなかない。豆腐とわかめの味噌汁くらいはありえるけど…。

というふうに手の届きそうで届かないちょっとアッパーな世界へいざなってくれるのが村上ワールドの魅力の一つですねー。

で、以前村上春樹が大好きという女の子と話をしたことがあります。「村上ハルキっていう作家が好きなんだけどぉ」という響きには「私ちょっと変わっているって言われるんだぁ」みたいなことを言いたいのかなぁと感じました。

日本で一番売れている作家なんで全く変わってなんかないから安心していいよ、と言おうと思ったのですが自尊心を傷つけそうなのでやめました。

村上ハルキさんの小説のように口説かれたいそうです。
「春のクマくらい君のことが好きだよ」なんて口が裂けても言わないだろうなぁ。。。


1Q84 BOOK 1



1Q84 BOOK 2



posted by iwajilow | 22:31 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
「さらば財務省!」「蟹工船」…4月〜GWに読んだ本


さらば財務省!/高橋洋一著/講談社

前半「なんて自慢話が多いのだろう」と辟易してしまいました。

例えば数学のお勉強がとてもよく出来たというエピソードとして
「中学生のときに大学レベルの数学が理解できた。高校に入ると、数学は半ば授業免除で、数学の先生からは『高橋君はもう授業受けなくていいよ』とまでいわれた。大学受験レベルの数学なら簡単に解けたので、入試のときも苦労はなかった」

はいそうですか…。

大蔵省時代の活躍ぶりとしては
「大蔵省を死に至らしめかねない財投の金利リスクを解消した私は。省内では大蔵省『中興の祖』と持ち上げられた」

はいそうですか…。

が、我慢して読み進めていくと、官僚がいかに自分達の権益のためだけに動いているかというのが少しづつわかってきます。

自分達の都合のいいようにマスコミに情報をリークする実態など、中枢にいた人でなければわからない話しはさすがに面白い。

読み応えはありました。



私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。/島村秀紀著/講談社文庫

前国立極地研究所所長による「不当」逮捕の手記。
自らの拘留生活が非常に冷静綴られています。

手紙は1通あたり7枚しか書いてはいけない、ノートのページを破ってはいけない、そのためにノートには1ページずつ通し番号が打ってある、外国語を書いてはいけない、などなどの規則。

そして否認を続ければ却下され続ける保釈請求の現実。

その保釈が利用され冤罪が生まれる現実。

この手記の中に日本の裁判、警察の問題点がいっぱいつまっています。




行政不況/中森貴和著/宝島社新書

耐震偽装や食品の偽装でもっとも得をしたのは実は行政であった…。

「官から民へ」という規制緩和の流れを押し戻し、規制強化することで自らの権限を広げ、その挙句の「官製不況」。

いやいや、官僚とは「ぬえ」です。

告発報道に触れるとき、にこの視点は必ずもってないといけないと思いました。




光市裁判を考える/現代人文社編集部編/現代人文社

本当に考えてしまいます。
僕としては綿井健陽氏の「世の中に伝えるべき対象は『被害者・遺族』だけなのか」という視点は大事にしていかないといけないと考えました。



サバイバー/石川彩夢/文芸社

DVを受け続けた女性の告白の書。

これが現代日本で行われていたという現実にゾッとします。




告発・電磁波公害/松本建造著/緑風出版

豊富な事例が示されていて、マジに怖くなりました。
そして意地でも対応しない電力会社も怖いです。

藤沢市の被害者が「健康上のことをいうと相手が応じないのはわかっていた。あくまでもテレビ画面の障害を理由に交渉した」と、自宅での電磁波被害を解決させたのは、いかにも、と思いました。

東海村の臨界事故で周辺住民に健康被害はないとし、人にはお金を払わず、芋だけに賠償金(補償金?)を払った、ということを思い出してしまいました。




戦場からの告発/西谷文和著/せせらぎ出版

薄い本ですが、イラクで今何が起こっているのか、なぜアメリカはイラクを狙ったのか、がよくわかります。

40過ぎてから公務員をなげうってジャーナリストに転身した西谷さんの熱さが伝わってきます。




南京事件の探求/北村稔著/文藝春秋



南京大虐殺歴史改竄派の敗北/本多勝一、渡辺春己、星徹著/教育史料出版会

南京大虐殺についてはできるだけたくさんの本を読まないといけないなぁと思っています。

僕は、こう論点が分かれる建前でない本当の理由が知りたいなぁと思います。



裁判長!ここは懲役4年でどうですか/北尾トロ著/文春文庫

僕は「冤罪?」と思って裁判を傍聴することは多かったのですが、こういう第3者としての裁判の見方、例えば弁護士や検察のテクニックを見る、という視点はまったくありませんでした。

新鮮です。

未決拘留16年/『未決拘留16年』刊行委員会

1986年のサミットのとき迎賓館にロケット弾が打ち込まれた事件での逮捕は冤罪だ、という本です。

この手のいわゆる「ゲリラ」事件は起訴された90%以上が一度は無罪判決が出ているということにびっくりしました。

逮捕、拘留することに意義があるのですね。

ただ、こういう色々な人が糾弾する資料集みたいな本は僕はどうも苦手です。



蟹工船/小林多喜二著/新潮文庫

この本に書かれていることが、どうしても100年近く昔とは考えられないです。

ただもっと巧妙になってきている、という違いだけのような気がしています。

状況も戦争前夜ってことなのかなぁ?考えすぎか…。





posted by iwajilow | 09:17 | いわぢろうの本棚 | comments(2) | trackbacks(0) |
「貧困大国アメリカ」「冤罪弁護士」…3月に読んだ本
















印象に残ったのは川田龍平氏と結婚された堤未果さんの「貧困大国アメリカ/岩波新書」。僕は堤さんにお会いするまで、大変失礼ながらただのお姉ちゃんだと思っていたのですが、とんでもない。素晴らしくジャーナリスティックな方でした。この本はそんな堤さんの取材力がいかんなく発揮され、また着眼点も素晴らしいルポルタージュです。
「貧困が生み出す肥満」から「病気」になり、崩壊した保険制度によりさらに「格差」が広がり、そこから脱却するために「軍隊」に入っていくという負の連鎖がとてもわかりやすく描かれています。

冤罪弁護士/今村核著/旬報社はどう冤罪が作られていくのが、それをどう無罪に持っていくのか、あるいは持っていけなかったのか、とてもスリリングに描かれています。
以前このブログで「長時間の取調べでなければ虚偽の自白はしない」というようなことをコメントされた「向こう側」の方がいらっしゃいましたが、短時間でも虚偽自白に追い込まれる過程も詳細に描かれています。
ここに取り上げられている事件は、この本を読む限りはどう考えても「無実」なのですが、「無罪」判決を勝ち取るためにここまで大変な思いをしなければならないということは、根本的に今の司法制度が全く機能していないということですね。
以前、朝日新聞のアンケートで「官僚を信用できる」とする人は1%でしたが、「裁判は信用できる」が70%を超えていました。しかし裁判官って官僚ですよね。

道路の権力/猪瀬直樹著/文芸春秋
猪瀬さんがいかに頑張ったかということを、ご自身で書かれた本。
中身はすごいです。いつも行政やら官僚にうまく丸め込まれてしまっている僕は足元にも及ばないと痛感しました。「ぬえ」のような官僚相手に良くここまで戦ったなぁと尊敬してしまいます。
ご自身でご自身のことを書かれているので若干、手前味噌的なところも感じてしまうのですが、そこは客観情報として新聞の見出しをいれるなど、さすが大宅賞作家です。
しかしこの本が書かれてからすでに5年ですが、現状をみると官僚とはやはり「ソンビ」だと実感してしまいます。


島根警察は悪魔/木村荘一著/本の泉社
島根県警の杜撰な捜査によって「ひき逃げ事件」を「病気転倒死」にされてしまった兄の恨みの書。
酷い事件だというのはよくわかるのですが、全編恨み節のオンパレードでちょっと僕にはきつかったっす。

裁判のカラクリ/山口宏+副島隆彦/副島隆彦事務所
裁判の判決や審理がいかにいい加減なものか、ということです。ここに書かれていることが全て真実だったらとんでもないことですね。

「検事が刑事部の部屋で裁判官と囲碁や将棋を指すなどして、和気あいあい
と過ごしているのは裁判官の日常的風景なのである。無論、囲碁や将棋を指せば必ず検事が負ける。いくらアマ将棋二段、三段の腕前を持った検事であっても、裁判官と将棋を指したら負けることになっている」

「ある刑事部でつづけざまに無罪判決が出た〜中略〜裁判官も目をつけていた人材のうち何人かが、(司法)研修終了後、検事になってしまった。人材のスカウトに失敗した裁判官はそのことを未だに根に持っていたため、無罪判決を連発させたのだという」

公正な裁判を…期待出来ないっス。

ロシア闇の戦争/アレクサンドル・リトヴィネンコ著/中澤孝之訳/光文社
ロシア政府に殺害されたと見られるリトヴィネンコ氏の衝撃の告発の書。ロシアという国が恐ろしい国だと思いつつ、この本を命を賭して、権力側にいた人間が書き上げたということにある種の羨望を感じました。
日本には、ほぼいないっすね…。

マスコミは何を伝えたか/佐藤友之/解放出版社
カレー事件の報道を丹念に検証。新聞報道を振り返るだけでも「別件逮捕」容認/「黙秘権」批判/「弁護活動」批判/自白の奨励…などなど警察の広報機関となっている、メディアの実態が見えてきます。
本当に冷静になって振り返ってみると恥ずかしい。
巻末のテレビ欄のタイトル一覧は強烈でした。

生きるという権利/安田好弘著/講談社
誤解を恐れながらいうのですが、麻原彰晃は本当に悪人だったのでしょうか?横山弁護士は本当に売名行為だけで何も役に立たなかったのでしょうか?裁判所は間違いなく善なのでしょうか?検察は100%善なのでしょうか?

そういった問いかけが、具体的な弁護活動の経過を通してズシリズシリと響いてきます。

「120%無実を証明しても無罪にはならない。300%証明しなければダメなのだ」という言葉があまりにも重いです。





posted by iwajilow | 20:17 | いわぢろうの本棚 | comments(2) | trackbacks(0) |
「希望は生徒」「チョコレートの真実」「被告最高裁」など2月に読んだ本
先月読んだ本です。バレンタインだったりもしたので「チョコレートの真実」なんぞも読んでみました。


チョコレートの真実/キャロル・オフ著/英治出版

「チョコレートの原料となるカカオ農園で働く子供達はチョコレートなんて食べたことがない」ということが僕にとってはすでに衝撃的でした。
奴隷の歴史から紐解いてチョコレートの血塗られた歴史を明らかにしてくれます。そして未だに、この現代に、奴隷制度は存在していることが明らかにされます。骨太のルポルタージュです。



岩国は負けない/週間金曜日編/金曜日

負けてしまいましたが…。
しかしこの本を読むといかに国がインチキ極まりないかという事がよくわかります。
例えば、今回、岩国市庁舎の補助金カットは完全な国の約束違反であること、また岩国では今の倍に飛行機が増えるというのに、さらにその艦載機は今配備されている飛行機より30%も騒音が大きいというのに「騒音は増えない」と言うマヤカシの答弁などわかりやすく書かれています。

岩国の人にも投票前にぜひ読んで欲しかった。。


希望は生徒/根津公子著/影書房

もしかしたら戦後初めて「君が代・不起立」で免職れるかもしれない根津先生の本。根津先生の戦争に対する考え方、どうしてそういう考えに至ったか、どういう教育を目指しているのか、などがよくわかります。特に自分の父親に対して「お父さんは中国で何人、殺したの?」など迫る部分は圧巻です。
僕は「太陽の季節」なんかよりよっぽどシンパシーを感じました。

またそういう根津先生の個人史とともに、都教委がいかにインチキかという事がよくわかります。僕も都教委の人に会ったことがありますが、正直「恥ずかしくないの?」と思いました。

教育委員会で配ってあげたい。それから学校の図書館にもね。そうだ今度、都庁内の本屋さんにあるか見に行こう。



ルーマニア・マンホール生活者たちの記録/早坂隆/中公文庫

最近は「世界のジョーク集」みたいな本が多いのですが、これは早坂氏が世に出るきっかけになったルポルタージュです。
早坂氏にはイラク開戦前に一度お会いしたことがあります。開戦前のイラクへ行かれていたのでその話をお伺いしに行きました。
ちょうど、お子様が生まれたばかりだったと思いますが、とても穏やかな方という印象でした。
そんな穏やかな人がどうしてイラクへ行けるのだろう?と思ったのですが、それはこの本にも当てはまります。
シンナー中毒者や売春婦やコソドロのたまり場になっているマンホールの中にどうしてこの人は入っていけるのだろう?
でも、決して構えることなく、自然体でマンホール・チルドレンと接する早坂氏だからこそ、彼らの切ない生活が見えています。
素敵なルポルタージュです。


単独発言/辺見庸著/角川文庫

ブッシュと小泉を徹底批判。返す刀で「以前は田中曽根内閣と言えるくらいの気概はあったのに」と腰の引けたメディアも批判します。頑張らねばー。


ゼニとナニワの人生道/青木雄二著/河出書房

奇才・青木雄二氏のデビュー作が読めると言うことで思わず買ってしまいました。「盛り場ブルース」というキャバレーのボーイが主人公の話なのですが、よい意味で大人です。
デビュー作からこんなに完成度の高い作品を書いていたのですね。さすがです。
「私が劇画家になったならばこれは貴重な物となるであろうから大切に保管しておいてもらいたい」
というようなことをはじめから言っているあたり、さすが青木雄二先生です



キメラ 満州国の肖像/山室信一著/中公新書

満州国の誕生の背景から消滅までを史実に基づき辿った本です。
僕は満州国が軍隊を持たない平和国家と名乗っていたとは知りませんでした。けれども防衛に関しては全面的に日本軍が請負っていたそうです。まるで今の日本とアメリカのように、ですね。


この国の終わり/林秀彦著/成甲書房

「日本民族は考えない、感じる民族だ」ということが著者は主張します。その証拠に「世界に通用する思想家が出ていない」そして「泣かぬならどうしてだろうホトトギス」という句がないのが象徴的だ、といいます。

なので「考える」ことを前提とした西洋のシステム、裁判、国会というものは全くなじまない。形式主義であとは根回しで決まってしまうのだ。

ということは共感できるのだけど、「南京大虐殺、従軍慰安婦はでっち上げだ」とか「皇紀3000年」とか「日本人は人を殺してこなかった」というあたりは全く共感できませんでした。



被告最高裁/庭山英雄編/技術と人間

今から10年以上前に書かれたこの本でも15例も「おかしいんじゃないの?」っていう判決が指摘されてることに、ただただ唖然とします。
この国の裁判は今、おかしくなったわけでもなく、最初からどうしようもなかったということがよくわかります。
そしてそのシステムはなんら改められることもないまま、今も冤罪を生み出しているのですね。

国策には逆らわない「原発訴訟」、企業に不利益は与えない「薬害訴訟」、検察のインチキをそのまま追認「狭山事件」などなど。最高裁は何一つ変わっていません。

本当に怒りが沸々とわいてくる一冊です。
posted by iwajilow | 22:13 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |
「肩書だけの管理職」「水戦争」など…今月読んだ本
去年は自分が読んだ本の記録を全くとっていなかったので、今年は読んだ本のレビューを書いておこう実は年始に誓ったのですね。が、やはりその都度書くというのは無理なので、1か月分まとめて書くことにしました。

この1ヶ月、仕事以外で僕はこんな本を読みました。

肩書だけの管理職/安田浩一+斉藤貴男/旬報社


昨今話題のマクドナルド店長の残業訴訟などの実態が詳しく書かれています。とにかくコナカ、すかいらーく、セブンイレブンなどなどの悲惨な労働環境が具体的でとてもその酷さがわかりやすかったですだ。さすが日本を代表する社会派ライターの安田浩一さんと斉藤貴男さんの作品です。

僕も管理職(実態はともかくとして肩書は、です)になって残業代が払われなくなったのだけど、それって理由はよくわからないながら、当然と受け止めていました。

実は管理職に残業代を払わなくていいなんて法律はなくて、残業代を支払わなくていいのは「経営者と一体的な地位にあるほどの権限を有しこれにともう責任を負担している」管理監督者だそうです。

えええっ、すごい権限じゃないか…。

さらに企業における「管理監督者」というのは従業員の8%前後というのが一般的な概念だそうです。

なるほど…で、この実体のない管理職を「偽装管理職」と呼ぶそうです。

これがわかっただけでも得した気持ちになりました。

全国にこの「偽装管理職」というのはどれくらいいるのでしょう。まさしく日本というのは「偽装」国家ですね。

沸々と怒りのわいてくる1冊でした。

生きさせろ/雨宮処凛/太田出版


僕はこの本を読むまで正直、雨宮処凛さんをちょっと胡散臭く思っていました。なーんの取材もしない人が「格差社会の女王」みたいに祭り上げられちゃってさー、と穿った見方をしていました。

大きな誤解でした。申しわけありません。雨宮さん本当にきちんと取材しています。そしてフリーターや氷河期世代の惨状を同じ目線で伝えてくれています。

自分自身がフリーターであり、キャバクラ嬢もやり、また地方出身者であることからの教育格差を身をもって実感していることの説得力です。

例えば、この本を読んだことで杉並の公立学校の夜間塾がなぜ問題なのか?などは少し理解が出来ました。

雨宮さん自身、北海道の出身で美大志望でした。ところが地方には美大への予備校なんてものはありはしません。それどころかそんな予備校があるという情報すらありません。都会の子どもは早くから美大専門の予備校に通い、受験用のデッサン力を早くから訓練し始めます。

早くから訓練を受けた人と、訓練を受けてない人の差は相当あります。

つまり、地方にいるというだけですでに教育格差が広がってしまうのです。教育機会均等なんてウソばっかりですね。

公立校の夜間塾だって同じと思いませんか?夜遅くまで人が歩いていて、街頭がたくさんある都会ならともかく、田舎で人がほとんど通らないところを子供達が夜間一人帰ってくるリスクって相当あると思いませんか?

そういうことを公教育の場で平然とやっていいの?いう主張はある面、真実と思いました

フリーターやニートの人たちに自己責任を押し付けるのは変じゃないか?ということに気が付かせてくれた大変貴重な一冊でした。

大統領はカネで買えるか?/堀田佳男/角川SSC新書


まさに今をときめく大統領選がわかるかなぁ、と思って読んでみました。
「大統領選にはお金がかかる」ということはよくわかりました。で、今のところヒラリーが一番カネを集めていて、その次がオバマだそうです。

ただ、僕は票がカネで買われたりしている、カネの「出」の方を期待していたのだけど、この本はカネの「入り」の仕組みのリポートでした。

そういった意味で、僕にとってはもう一つでした。
ただ法の網の目をかいくぐる集金システムはそうとう、よくわかりました。

生活保護「ヤミの北九州方式」を糾す/藤藪貴治×尾藤廣喜/あけび書房


「おにぎり食べたい」と書き残して餓死していったあの北九州の「生活保護行政」。著者の藤藪さんはもともと北九州市役所で生活保護ケースワーカーとして働いていた方です。だからこそここまで今まで闇とされていた実態をより深くリポート出来たのだろうと思います。

現場の経験を踏まえた告発、取材で北九州の弁明がいかに荒唐無稽なものかよくわかります。そしてまだまだでてくる極悪非道の「生活保護行政」の実態。

あの餓死事件だけでなく、自殺、自殺未遂など高齢者、障害者、母子家庭などいかに北九州市は、自分達の出世のためにどんどん人を追い込んでいきました。

そして、この北九州市の指導課長には実は旧厚生省の役人達が次々と天下っていることも明らかにされます。

つまり、「北九州方式」というのは国の方針だったのです。この生活保護申請をさせない「水際作戦」そして受給したら「辞退届け」をかかせるという指導は国が率先していたのですね。

「北九州方式」は一地方の問題ではなく、この国の行政がいかに腐っているかをわからせてくれます。

エビと日本人/村井吉敬/岩波新書


「エビと日本人」を読んだのはまだ学生のときでした。それから20年も経ったんだと感慨深く思ってしまいました。

かつて隆盛を誇った台湾のエビ養殖は壊滅状態になり、今ではインドネシアやベトナムやフィリピン、そして中南米だそうです。

そして今や主役はブラックタイガーでなくバナメイというエビだそうです。そんなエビかわからなかったのですが、あの白いエビなんですね。そういえば昔はなかった。。。

さらにエビがカネになることでどんどんマングローブ畑が破壊されていく現実。。

その一方日本ではエビそのもの消費量は減少しているそうです。なぜならばエビのもっともポピュラーな調理方法はエビフライだとか天ぷら。

日本では油モノを家庭で作ることが最近嫌われてるため、レンジで温めるだけといった加工エビにシフトしているそうです。

インドネシアやらベトナムやらで日本人に輸出するために1日中背ワタの処理をし続ける人々。

冷凍食品のエビにこれだけの物語が詰まっているのですね。

食糧自給ということについても深く考えてしまいました。

孤独のグルメ/久住昌之×谷口ジロー/扶桑社文庫


B級グルメ本ですが、漫画です。

この主人公の「昼飯食べたいけど、ファミレスやだなー」といいつつ街を探検してしまう気持ちはものすごく共感します。

さらに入った中華屋で店のオヤジがバイトを怒鳴り散らしてむかついて「人の食べている前でそんなに怒鳴らなくていいでしょう」と抗議するシーンもものすごく共感します。

実際、そういうオヤジの店なんて二度と行きたくないです。
ワヒが言っているの赤坂の札幌屋のオヤジのことだよーだ。

サイコーですか?最高裁!/長嶺超輝/光文社


著者が言うように「最高裁って自分でサイコー」って言っちゃうところなんてそうそうないですだね。そんな最高裁の建物から仕組みから裁判官までを網羅した、ある意味最高裁事典です。

国民審査はちゃんと審査しようと思います。

袴田事件/山本徹美/新風舎


まずは出版社をみて驚いてしまったんですね。なんと「新風舎」!ちゃんとした本も出してるじゃないか、と思ってしまいました。

肝心の本ですがまずは著者の綿密な取材に頭が下がります。そして次々と明らかになっていく調書の矛盾。

本当に一家は就寝中の午前1時に殺されたのか?であるなら、みんな腕時計をしたまま寝てたのか?中学生だった長男はワイシャツでポケットにシャーペンを入れたまま寝てたのか?高校生の長女はブラジャーをつけたまま寝るのか?

警察が言うことが本当なら、袴田さんは熱帯夜にステテコはいてその上に厚手のズボンはいて、さらにスポーツシャツ着て、その上に雨合羽着て(雨も降ってないのに)殺人に及んだのか?

強盗殺人なら、お金はどこにいったのか?袴田さんが使ったとはっきりしているのは、持病の蓄膿症の薬を買ったことだけじゃないか?じゃあ残りのお金は?

警察と裁判所にはこの本に上げられている疑問にいちいち答えて欲しいと切に願います。

もっとも最高裁では検察がその疑問にある程度答えています。それは
「元来、犯罪はそれ自体が不条理、非合理なものであって、犯罪に関する全ての行動が冷静な理性や健全な常識の命ずるところに従って行われるものとは限らない」

つまり「犯罪は異常なのだから辻褄が合わないことがあってもいいんだ」と言うことですね。この検察官は竹村照雄という方です。素敵な方です。

袴田氏はこの逮捕当時1歳の男の子がいたそうです。大変子煩悩だったようです。そして警察に疑われてると言われると「こんな子がいるのに出来るか」と怒ったそうです。

もっと一緒にいたかっただろうなぁ、と思います。


はけないズボンで死刑判決 /袴田事件弁護団 /GENJINブックレット


上記の「袴田事件」のブックレットです。30分くらいで袴田事件がわかります。

水戦争/柴田明夫/角川SSC新書


うーむ、僕は多国籍企業による発展途上国の水道事業買取、みたいなことがもっとリポートされていると思っていたので…。

こういう危機が迫っているよー、という本でした。







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四丁目の夕日
山野一氏作の「四丁目の夕日」を読みました。
こちらは「別所軽印刷」というオヤジさんの経営する小さな印刷工場が舞台です。しかし「鈴木オート」を舞台にするウソっぽーい「三丁目の夕日」とは全く違う世界が描かれています。

「別所軽印刷」の長男は家族の期待を一身に背負って、国立大進学を目指す高校三年生。中卒でここまで苦労して町工場を経営するにまでなったオヤジさんは「学歴さえあればこんな苦労はしなくて済む」と長男、たけしの進学のために一生懸命働く。
成績優秀なたけしは一橋大は合格圏内、前途洋々かと思われたある日、かあちゃんが事故で大怪我をする。そこからたけしの人生は大きく狂っていく。
母ちゃんの入院費を稼ぐため、夜を徹して働いていたオヤジさんは、過労がたたり、機械に巻き込まれ死亡。そこへ借金取りがおしかけ、葬式をめちゃくちゃにする。弟と妹の生活を支えるため進学を諦め工場経営を始めるたけしだが、工場はあえなく倒産する。そしてさらなる悲劇が一家を襲うのだ。


「三丁目の夕日」で描かれた古きよき昭和30年代。でもでも、あの時代がそんなによかったか?という僕の素朴な疑問をこの漫画はカタチにしてくれています。
あの時代だってたくさん問題はあったはずです。例えば水俣病が公式に発見されたのはそのつい2年前でこの当時は、なーんの解決にもいたっていません。またイタイイタイ病もこの映画の3年前の昭和30年に初めて報じられています。まさに公害列島の幕開けの時代でもあったわけですね。

あの時代は「貧乏だった」けど「希望があった」とか「人情があった」とか、っていうノスタルジー万歳な言葉を聞くたびに「ほんとかよー」と僕は思ってしまいます。

水俣で水俣病になった人たちを「伝染る」とか「腐った魚を食う貧乏人」といって差別したり、戦後の中国からの帰国者たちを「アカ」と差別したり、おぞましいことはたくさんあったはずです。

現状が不満で、未来にも希望が持てないから過去にベクトルが向いてしまうのかもしれませんが、決して「バラ色の過去」ではなかったと思います。もしかしたら権力が「希望」という名の下、庶民をうまく騙せていた「バラ色の時代」だったのかもしれませんが…。

「くたばっちまったんだって?あのオヤジ…ぐっちゃんぐっちゃんだったっつーじゃーん」
「くたばれや、貧乏人」
この漫画の中のこういったセリフに象徴されるもうひとつの庶民史を決して忘れてはいけないと思うし、それは今にも脈々と続いているのだと思いますだ。

posted by iwajilow | 22:15 | いわぢろうの本棚 | comments(0) | trackbacks(0) |